一級建築士

【一級建築士 学科Ⅰ】日本建築史①古代〜中世|写真で覚える大仏様・禅宗様と神社本殿5形式(8問32肢)

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【一級建築士 学科Ⅰ】日本建築史①古代〜中世|写真で覚える大仏様・禅宗様と神社本殿5形式(8問32肢)

一級建築士・学科Ⅰ(計画)のNo.2でよく出る「日本の歴史的な建築物」。日本建築史の1回目として、飛鳥から室町までの寺院と神社を、写真と略図で整理します。

動画でも解説しています。

この記事でわかること

  • 過去10年で8問・32肢、どこが狙われるか
  • 誤りの作り方は様式の付け替え
  • 大仏様と禅宗様の見分け方
  • 神社本殿5形式は妻入か平入か、形式と建立年は別

何を調べたか

  • 問題:建築技術教育普及センターが公表した平成29年〜令和8年の学科Ⅰ
  • この枠はすべて「最も不適当なもの」を選ぶ問題で、正答肢は誤りの記述
  • 建物の年代は文化庁の国指定文化財等データベースで確認
  • 分類と「どこが誤りか」は筆者の読み(センターは誤りの理由を公表していない)
32肢の内訳

日本の建築史を問う問題は10年のうち8年で出ていて、8問・32肢ありました。古代〜中世の建物が19肢でいちばん多く、誤りの肢8つのうち5つもここです。この範囲を押さえれば、No.2の半分以上に手が届きます。

2回出た建物は、円覚寺舎利殿・薬師寺東塔・出雲大社本殿の3つで、いずれも1回は誤りの肢でした。懸造は3回出て、3回とも正しい肢でした。

寺院の様式:誤りは「付け替え」

誤りの作り方は「付け替え」

誤りの肢は、建物の様式を別の様式の特徴とすり替えて作られていました。特徴の言葉そのものは正しく、くっつける建物が違う、という形です。

  • 法隆寺金堂を「禅宗様」(令和3年)
  • 円覚寺舎利殿を「大仏様」(令和5年)
  • 薬師寺東塔を「飛鳥様式の五重塔」(令和8年)
  • 春日大社本殿を「権現造」(令和元年)

法隆寺金堂(飛鳥時代)

法隆寺金堂と五重塔

*写真:ONO Masanobu/CC0/Wikimedia Commons*

令和3年は、海老虹梁と詰組の禅宗様とした肢が誤りでした。正しくは飛鳥の建物で、特徴は雲斗雲肘木と卍崩しの高欄です。

飛鳥の特徴(略図)

雲斗・雲肘木とは、軒を支える斗と肘木が雲のような曲線の形をしているもので、卍崩しの高欄とは、手すりの組子を卍をくずした形に組んだものです。この2つは法隆寺金堂の言葉として覚えます。

薬師寺東塔(奈良時代・730年)

薬師寺東塔

*写真:Zairon/CC BY 4.0/Wikimedia Commons*

令和8年は、雲斗雲肘木と卍崩しの「飛鳥様式の五重塔」とした肢が誤りでした。令和3年に法隆寺金堂の説明として正しかった言葉を、そのまま別の建物に付け替えた形です。

屋根が六つでも三重塔

しかも五重塔ではありません。データベースでは「三間三重塔婆、毎重もこし付」です。三重塔の各重に裳階という小さな屋根が付いているので、屋根が六つに見えます。

円覚寺舎利殿(禅宗様)

円覚寺舎利殿

*写真:Saigen Jiro/CC0/Wikimedia Commons*

令和5年は、挿肘木と化粧屋根裏の大仏様とした肢が誤りでした。令和8年には、扇垂木と詰組の禅宗様という正しい肢で出ています。

大仏様と禅宗様の見分け方

大仏様と禅宗様は、どちらも中国・宋の建築様式を取り入れたもので、和様にない部材を使うため取り違えを狙われます。

大仏様:東大寺南大門・浄土寺浄土堂

東大寺南大門

*写真:Balon Greyjoy/CC0/Wikimedia Commons*

大仏様とは、柱に差し込んだ挿肘木を何段も重ねて軒を支え、太い通し柱を貫で固める様式のことで、重源が東大寺の復興で取り入れました。代表例は東大寺南大門(1199年)です。

浄土寺浄土堂

*写真:663highland/CC BY 2.5/Wikimedia Commons*

兵庫県の浄土寺浄土堂(1192年)も代表例です。天井を張らずに屋根裏をそのまま見せる化粧屋根裏で、垂木は隅だけ扇垂木にします。

禅宗様との比較

大仏様と禅宗様(略図)

禅宗様は、柱の上だけでなく柱と柱の間にも組物を置きます。これが詰組です。花頭形の窓や入口、海老虹梁、裳階、中央の鏡天井も、禅宗様の言葉です。

垂木の配り方
  • 和様:垂木を平行に配る
  • 大仏様:隅だけ扇垂木
  • 禅宗様:軒全体を放射状に配る扇垂木

扇垂木なら和様ではありません。覚え方の軸は次のとおりです。

  • 大仏様=挿肘木・化粧屋根裏・隅だけ扇垂木
  • 禅宗様=詰組・扇垂木・花頭窓

令和5年の円覚寺舎利殿は、この左右をそっくり入れ替えた肢でした。

神社本殿の形式

5つの形式を形で覚える

神社本殿の形式は、令和元年に1問まるごと4肢、令和5年と7年にも出ています。見分けるポイントは、入口が屋根の三角形の側(妻側)にある妻入か、長い側にある平入かです。

  • 妻入:大社造・春日造
  • 平入:神明造・流造・八幡造

神明造:伊勢神宮内宮正殿(平入)

伊勢神宮の神明造(図)

*図:服部勝吉/パブリックドメイン/Wikimedia Commons*

柱はすべて掘立柱で、両端に棟持柱が2本立ちます(令和元年・正しい肢)。

大社造:出雲大社本殿(妻入・1744年)

出雲大社本殿

*写真:Saigen Jiro/CC0/Wikimedia Commons*

切妻造の妻入で、平面は2間×2間。正面の片方の柱間を入口にするので、左右非対称です(令和元年・7年 正しい肢)。

流造:賀茂別雷神社(平入・1863年)

賀茂別雷神社本殿

*写真:文化財保護委員会/パブリックドメイン/Wikimedia Commons*

切妻造の平入で、前の屋根を長く延ばして向拝とします(令和元年・正しい肢)。

春日造:春日大社本殿(妻入・1863年)

春日大社本殿

*写真:Zairon/CC BY 4.0/Wikimedia Commons*

切妻造の妻入で、正面に庇を付けます。令和元年は、春日大社本殿を権現造とした肢が誤りでした。

権現造と春日造

権現造とは、本殿と拝殿を石の間でつなぐ形のことです。令和7年には日光東照宮の説明として正しい肢で出ています。その権現造を春日大社に付けたのが、令和元年の誤りです。

日光東照宮

*写真:Fg2/パブリックドメイン/Wikimedia Commons*

八幡造:宇佐神宮本殿(平入・1855〜62年)

宇佐神宮本殿

*写真:sk01/CC BY-SA 3.0/Wikimedia Commons*

切妻造・平入の2棟を前後に並べ、あいだを相の間でつなぎます(令和5年・正しい肢)。

形は古いが、建物は江戸時代

形は古いが、建物は江戸時代

形式の名前は古代から続くものですが、いま建っている本殿は江戸時代のものが多いことが、データベースで確かめられました。春日大社は、約20年ごとの造替で古い形を守ってきたと解説されています。試験は形式を聞いているので、形式の古さと建立年を混同しないようにします。

平安〜室町の、様式以外の出題

平等院鳳凰堂(平安中期・1053年)

平等院鳳凰堂

*写真:663highland/CC BY 2.5/Wikimedia Commons*

藤原頼通の阿弥陀堂です。中堂・両翼廊・尾廊からなる左右対称の建物で、池の中島に建ちます(令和8年・正しい肢)。

懸造:清水寺本堂・三仏寺投入堂・東大寺二月堂

清水寺本堂

*写真:Martin Falbisoner/CC BY-SA 4.0/Wikimedia Commons*

懸造とは、崖や斜面に長い束柱を立てて貫で固め、その上に床を張り出す建て方のことです。

懸造のしくみ(略図)

清水寺本堂(令和3年)、三仏寺奥院 投入堂(令和6年)、東大寺二月堂(令和7年)と3回出て、3回とも正しい肢でした。

三仏寺投入堂

*写真:Saigen Jiro/CC0/Wikimedia Commons*

石山寺多宝塔・箱木家住宅

石山寺多宝塔

*写真:Zairon/CC BY 4.0/Wikimedia Commons*

  • 石山寺多宝塔:鎌倉前期・1194年。現存最古の多宝塔(令和8年・正しい肢)
  • 箱木家住宅:室町後期と推定される「千年家」。国内最古級の民家(令和5年・正しい肢)

慈照寺東求堂(室町後期・1486年)

慈照寺東求堂

*写真:Jmhullot/CC BY 3.0/Wikimedia Commons*

中の同仁斎は四畳半で、付書院と違棚を備えます。令和7年は、これを数寄屋造とした肢が誤りでした。付書院と違棚は書院の座敷飾りで、ここは書院造の源流として問われたと読めます。令和2年の光浄院客殿も「数寄屋風」として誤りでした。書院造と数寄屋の取り違えは、2回使われた型です。

円覚寺舎利殿は「鎌倉」ではない

円覚寺は1282年に北条時宗が創建した鎌倉の寺なので、舎利殿も鎌倉時代と覚えがちです。しかしデータベースでは、舎利殿の時代は室町中期で、もとは鎌倉の太平寺の仏殿を16世紀に移したものと書かれています。試験は様式を問うので年代までは聞かれていませんが、「禅宗様=鎌倉」の連想で年代問題を解くと外れる例です。

まとめ

古代〜中世のまとめ
  • 大仏様=挿肘木・化粧屋根裏・隅だけ扇垂木(東大寺南大門・浄土寺浄土堂)
  • 禅宗様=詰組・扇垂木・花頭窓(円覚寺舎利殿)
  • 飛鳥=雲斗雲肘木・卍崩し(法隆寺金堂)/奈良=薬師寺東塔(三重塔+裳階)
  • 神社本殿は5形式の形と代表例。妻入か平入かで見分ける
  • 誤りの肢は、どれも特徴の付け替え

次回は近世、書院造・数寄屋・城郭です。

出典

この記事は公表資料をもとにした個人の学習ノートです。問題文は要約しており、分類と「どこが誤りか」は筆者の判断です。建物の年代などは原典で必ずご確認ください。