【一級建築士 製図】直前の法令チェック|課題「ホテル」で落とされないための9項目
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令和8年10月11日の一級建築士・設計製図の試験(課題「ホテル」)に向けて、法令だけに絞って直前に確認したいことを整理した回の記事版です。エスキスや作図の話はしません。加点を狙う話ではなく、落ちないための話です。
動画でも解説しています。
この記事でわかること
- 一発で不合格になるランクIVを踏まないための確認
- 令和8年からの変更:製図でも法令集が2冊使える
- 課題「ホテル」で効く法令
まず、落ち方を知る

令和7年の採点結果では、合格のランクIが35%でした。注目したいのは、ランクIIがわずか1.6%しかいないことです。「あと一歩で不合格」という人はほとんどいません。一方で、ランクIIIとランクIVを合わせると63.4%。落ちるときは大きく落ちています。
裏を返すと、致命傷さえ避ければ上位のグループに入れるということです。直前にできるのは、加点を狙うことではなく、一発で終わる項目をひとつずつ潰すことです。
令和8年からの変更:製図でも法令集が使える
- 試験時間:11時00分〜17時30分(6時間30分)
- 法令集は2冊まで使用できる
- 法令集のチェックは試験開始後に行う
- 適用する法令は、令和8年1月1日現在で施行されているもの
学科では休憩時間に法令集のチェックを済ませますが、製図では試験開始後です。着席してすぐ全速力、とはいかない前提で時間配分を考える必要があります。
「持ち込めるから覚えなくていい」にはならない
6時間30分でエスキス・作図・記述までこなすなかで、法令集を開ける回数は現実的には数回です。どこを引くかを事前に決めておいた人だけが得をする制度変更です。そこで、数字を2つに仕分けます。
- 覚えておく:判断の分岐に使う数字(面積・距離・階数のしきい値)
- 当日引く:記述や面積表で、正確な言い回しや端数処理が要るもの
覚えておきたいのは次の4つです。
- 延焼のおそれのある部分(1階3m・2階以上5m)
- 二以上の直通階段のしきい値
- 竪穴区画がかかる条件
- 高さ制限の種類(道路・隣地・北側・高度・日影)
ランクIVを踏まない
ランクIVとは、「設計条件及び要求図書に対する重大な不適合」に当たる答案のことで、ほかの出来に関係なく不合格になります。型は4つあります。
- 要求図書が完成していない
- 「計画の要点等」が無記載、または答えになっていない
- 要求室の欠落・階の指定違反・床面積の不適合
- 法令への重大な不適合(建蔽率・容積率・高さ・防火・避難)
このうち1と2は、法令の知識と関係なく防げます。描き切ること、記述欄を空けないこと。時間が足りないときは、精度を落としてでも全部埋めるほうが生き残ります。
高さ制限は「描いて示す」
令和7年の試験結果では、ランクIII・IVの要因のひとつとして「高さ制限への適合が確認できる情報の未記載」が名指しされました。満たしていても、図面から読み取れなければ評価されないということです。断面図には次のものを書き込んでおきます。
- 斜線の検討線
- 基準となる高さ
- 後退距離
- 軒高・最高高さの寸法
「道路斜線検討」と文字で添えるだけでも、伝わる情報量が変わります。条件文に書かれた制限は、すべて断面図で答える、と決めておくと漏れません。
面積表で落とさない
ホテルの共用廊下・階段は容積率に算入される
容積率の不算入を定めた法52条6項で、不算入になるのは昇降機の昇降路(一号)と、共同住宅・老人ホーム等の共用の廊下・階段(二号)などです。ホテルは二号に入っていないので、共用廊下や階段は不算入になりません。一方、昇降路は用途を問わず不算入です。共同住宅の課題の感覚のまま廊下を落とすと、面積表が合わなくなります。
既存棟の床面積も敷地に乗る
今年の課題には既存建築物が登場しました。同じ敷地に残す以上、既存棟の建築面積と延べ面積も、敷地全体の建蔽率・容積率に算入されます。
今年の肝:既存建築物の現状保存

令和8年の「建築物の計画に当たっての留意事項」は6項目あり、その1番目が「敷地の周辺環境や既存建築物の現状保存に配慮して計画する」でした。既存棟を残したまま新築棟を計画するとき、別棟のままにするか、つないで一の建築物にするかで、法令の当たり方が変わります。
- 別棟のまま:同一敷地内の2以上の建築物として、相互の外壁間の中心線から延焼のおそれのある部分が発生する(1階3m・2階以上5m)。棟間を詰めると、向かい合う面に開口部の制限がかかる
- 渡り廊下でつなぐ:全体が一の建築物になる。棟間の延焼ラインは消えるが、防火区画・避難経路・歩行距離を既存棟まで通して検討する
どちらが正解という話ではありません。選んだほうの検討が図面に表れていることが、評価の対象です。
課題「ホテル」で効く法令
- 用途は法別表第一(い)欄の(二)項(病院や共同住宅と同じ枠)
- 耐火:3階以上の階をホテルに供するもの、または2階部分の床面積の合計が300m²以上で、法27条1項の対象
- 二以上の直通階段:令121条1項五号。宿泊室のある階の居室の床面積の合計が100m²超(主要構造部が準耐火構造等なら200m²超)
- 竪穴区画:令112条11項(吹抜け・階段・昇降路まわり)
- 非常用エレベーター:高さ31m超で必要
客室階は宿泊室が並ぶので、二以上の直通階段はほぼ確実に必要です。階段の位置と歩行距離、重複区間の長さまで、最初のゾーニングで決めてしまうのが安全です。
ホテルの客室に、採光の義務はない
法28条1項の対象は、住宅・学校・病院・診療所・寄宿舎・下宿その他これらに類する建築物で政令で定めるものです。ホテルはこの列挙に入っていないので、客室に採光の義務はありません。窓を設けないほうがよいという話ではなく、法28条の義務がないというだけです。採光補正係数の計算に時間を使わないようにします。
バリアフリーは今年ほぼ確実に効く
ホテルは特別特定建築物で、2,000m²以上の建築なら、建築物移動等円滑化基準への適合義務がかかります。押さえる数字は4つです。
- 客室の総数が50以上なら、車椅子使用者用客室を総数の1%以上(端数は切り上げ)
- 経路を構成する出入口の幅 80cm以上、廊下の幅 120cm以上
- 傾斜路の勾配 1/12以下(高さ16cm以下なら1/8以下)
客室数が50前後になりそうなら、車椅子使用者用客室の要否が変わるので意識して決めます。
まとめ:直前チェック9項目
- 描き切る・記述を空けない
- 高さ制限は断面図に書いて示す
- ホテルの共用廊下・階段は容積率に算入(昇降路だけ不算入)
- 既存棟の面積も敷地に乗る
- 別棟なら棟間の延焼ライン(1階3m・2階以上5m)
- 客室階は二以上の直通階段(令121条1項五号)
- 客室に採光義務はない。時間を使わない
- 客室50以上なら車椅子使用者用客室を1%以上
- 法令集は2冊。チェックは試験開始後で、引くのは数回と割り切る
出典
この記事は令和8年9月時点の試験情報と現行法令をもとにした個人の整理です。試験の実施方法・携行品の扱いは変更されることがあります。受験票と受験総合案内の記載を必ず優先し、法令の数値は手元の法令集でご確認ください。


