【一級建築士 学科Ⅰ】西洋建築史②ルネサンス〜近代|写真で覚えるフィレンツェ・シュレーダー邸・バウハウス(過去問20肢を全部解説)
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一級建築士・学科Ⅰ(計画)で出る西洋の建築史の2回目です。ルネサンスから近代、現代までの建物・都市を扱う20肢を、正しい肢も含めて全部、写真で確認します。前回の範囲は誤りの肢が1つだけでしたが、今回の20肢には誤りの肢が6つあります。
動画でも解説しています。
この記事でわかること
- 誤りの肢6つは、全部すり替え
- ルネサンス・バロック・19世紀・1900年前後・1920年代・戦後の代表作の特徴
- 建物と背景(運動・様式)の組み合わせ
何を調べたか
- 問題:建築技術教育普及センターが公表した平成29年〜令和8年の学科Ⅰ
- 7問は「最も不適当なもの」を選ぶ問題で、正答肢は誤りの記述
- 正答肢は公表の正答表8年分と照合
- 建物の年代・特徴は Wikipedia(英語版) で確認。どこが誤りかは筆者の読み
誤りの肢6つは、全部「すり替え」
今回の範囲の誤りの肢は、どれも作り話ではありませんでした。別の建物や様式、別の人物の特徴を、そのまま持ってきた記述です。説明が正しそうかではなく、その説明はどの建物のものかまで言えるようにしておくと、確実に見抜けます。

ルネサンス
テンピエット(1502年)

*写真:Labicanense/CC BY 4.0/Wikimedia Commons*
ブラマンテがローマに建てた円形の小さな神殿風の建物で、ローマの盛期ルネサンスの始まりとされます。平成29年の並べ替えで出ました。
フィレンツェ大聖堂(ドーム1420〜1436年)

*写真:Gary Campbell-Hall/CC BY 2.0/Wikimedia Commons*
ブルネレスキが架けたドームは、八角形で直径約44m。計画の段階から外側のバットレスを使わないことが決まっていて、木の仮枠なしで架けた最初の八角形ドームとされます。令和4年は、このドームが「直径約31mで、東西の半ドームと南北の4つのバットレスで支えられている」という肢が誤りでした。

直径約31m、東西に半ドームは、ハギア・ソフィアの形です。建物名と設計者はフィレンツェのまま、形の説明だけ別の有名なドームから持ってきています。ドームは直径で見分けます。
- パンテオン:43.3m
- フィレンツェ大聖堂:約44m
- ハギア・ソフィア:約31m
サン・ピエトロ大聖堂(1506〜1626年)

*写真:Alvesgaspar/CC BY-SA 4.0/Wikimedia Commons*
主な設計者はブラマンテ、ミケランジェロ、マデルノ。令和元年は、この大聖堂を「内陣に周歩廊と放射状の祭室をもつゴシック建築」とした肢が誤りでした。サン・ピエトロはイタリア・ルネサンスの教会堂です。
カンピドリオ広場(16世紀)

*写真:Kameister/CC BY-SA 4.0/Wikimedia Commons*
ローマのカピトリーノの丘の上の広場で、ミケランジェロが計画しました。台形の広場、斜路状の大階段、3つのパラッツォを対称に置いて軸線を強調しています(令和3年・正しい肢)。
バロック
サン・カルロ・アッレ・クァットロ・フォンターネ聖堂(1638〜1641年)

*写真:Architas/CC BY-SA 4.0/Wikimedia Commons*
ボッロミーニの最初の単独の仕事で、凹凸が波打つファサードと楕円形のドームが特徴です。令和元年と令和7年にほぼ同じ内容が出て、2回とも正しい肢でした。
セント・ポール大聖堂(1675〜1710年)

*写真:Mark Fosh/CC BY 2.0/Wikimedia Commons*
1666年のロンドン大火のあと、クリストファー・レンが設計したイギリス・バロックの大聖堂です。平成29年の並べ替えでは、4つのうち最も新しい建物でした。
19世紀
大英博物館(1824〜1847年)

*写真:Ham/CC BY-SA 3.0/Wikimedia Commons*
ロバート・スマークの設計で、正面にイオニア式の列柱が並ぶ新古典主義の建物です。新古典主義とは、古代ギリシア・ローマ建築の研究にもとづく様式のことです(令和2年・正しい肢)。
ウェストミンスター宮殿(1840〜1870年頃)

*写真:ThatsTheBoss/CC0/Wikimedia Commons*
ロンドンの国会議事堂で、1834年の火災のあとチャールズ・バリーの案で約30年かけて再建されました。様式はゴシック・リヴァイヴァルです。令和6年は、この宮殿を「幾何学的な庭園と鏡の間をもつバロック様式の建物」とした肢が誤りでした。

*写真:Myrabella/CC BY-SA 3.0/Wikimedia Commons*
鏡の間はヴェルサイユ宮殿のバロック様式の回廊(1678〜1684年)で、幾何学式の庭園もル・ノートルによるヴェルサイユの庭園です。建物名だけを入れ替えた作り方でした。
1900年前後
タッセル邸(1892〜1893年)

*写真:Karl Stas/CC BY-SA 3.0/Wikimedia Commons*
ブリュッセルにあるヴィクトール・オルタの住宅です。植物の茎のようにしなる曲線の装飾が、各国のアール・ヌーヴォーに影響しました(令和2年・正しい肢)。
ウィーン郵便貯金局(1904〜1906年)

*写真:Gryffindor/CC BY 2.5/Wikimedia Commons*
オットー・ワーグナーの設計で、当時新しかった鉄筋コンクリートで建てられた、ウィーン分離派(ゼツェッション)の重要な作品です。令和2年は、この建物の背景をアーツ・アンド・クラフツ運動とした肢が誤りでした。

アーツ・アンド・クラフツとは、19世紀後半のイギリスで、ラスキンやウィリアム・モリスの考えから起こった、機械生産に反発する運動のことです。説明自体は正しいのですが、新しい材料を積極的に使った郵便貯金局とは、むしろ逆向きです。
- 大英博物館:新古典主義
- タッセル邸:アール・ヌーヴォー
- ウィーン郵便貯金局:ウィーン分離派
- シュレーダー邸:デ・ステイル
レッチワース(1903年〜)

*写真:Richard Kelly/CC BY 4.0/Wikimedia Commons*
世界最初の田園都市です。エベネザー・ハワードが提唱し、街の配置はアンウィンとパーカーの設計です。令和3年は「パトリック・ゲデスの保存的外科手術という考え方で、歴史性を保存しながら再開発された都市」とした肢が誤りでした。レッチワースは何もない土地に新しく計画された町なので、正反対です。保存的外科手術は、ゲデスがエディンバラの旧市街で、傷んだ建物だけを取り除いて環境を良くした手法の名前です。
ロビー邸(1909〜1910年)

*写真:Teemu08/CC BY-SA 3.0/Wikimedia Commons*
シカゴにあるフランク・ロイド・ライトの住宅で、屋根が片持ちで大きく張り出し、強い水平線を見せます。構造の芯は煙突です。令和8年は「プレーリー・ハウス(草原住宅)の代表例」という正しい肢でした。
1920年代の近代建築
シュレーダー邸(1924年)

*写真:Husky/CC BY 3.0/Wikimedia Commons*
ユトレヒトにあるリートフェルトの住宅で、白と灰色の面に三原色の線を組み合わせた、デ・ステイル建築の代表例です。2回出ていて、令和2年の「デ・ステイルが背景」は正しい肢、令和8年の「ピロティ・屋上庭園・自由な平面・水平連続窓・自由な立面の五つの要素でデ・ステイルを具現化」は誤りの肢でした。
近代建築の五原則とは、ル・コルビュジエが1927年に示した、ピロティ・屋上庭園・自由な平面・水平連続窓・自由な立面の5つのことです。デ・ステイルとは別の人物の原理を持ってきた作り方です。
バウハウス校舎(1925〜1926年)

*写真:Gunnar Klack/CC BY-SA 4.0/Wikimedia Commons*
デッサウにあるグロピウスの設計です。機能ごとに分けた建物を非対称に組み合わせた構成と、工房棟のガラスのカーテンウォールが特徴で、柱を内側へ下げたので3層にわたる切れ目のないガラス面ができました(令和8年・正しい肢)。
バルセロナ・パヴィリオン(1929年、1986年に再建)

*写真:Ashley Pomeroy/CC BY 3.0/Wikimedia Commons*
1929年のバルセロナ万国博覧会のドイツ館として、ミース・ファン・デル・ローエが設計しました。十字形断面の鉄骨の柱で屋根を支え、柱のあいだに大理石などの壁を自由に置いて、内と外があいまいな連続した空間をつくりました(令和8年・正しい肢)。
戦後〜現代
チャンディガール(1950年代〜)

*写真:duncid/CC BY-SA 2.0/Wikimedia Commons*
インドで戦後に新しく計画された都市で、1950年からル・コルビュジエのチームが計画を引き継ぎました。街は格子状のセクターに分けられ、道路は幹線道路から歩行者路まで7段階に分けられています(令和3年・正しい肢)。
TWAターミナル(1962年)

*写真:Roland Arhelger/CC BY-SA 4.0/Wikimedia Commons*
ニューヨークのJFK空港のターミナルで、エーロ・サーリネンの設計です。鳥の翼のような4枚の鉄筋コンクリートの薄いシェルが中央で支え合い、4本のY字形の柱脚で支えられています(令和4年・正しい肢)。
ミレニアムドーム(1999年)

*写真:jamesjin(Flickr)/CC BY-SA 2.0/Wikimedia Commons*
リチャード・ロジャースの設計の膜構造のドームです。直径365m(1年の日数)、高さ52m(1年の週数)、高さ100mのマスト12本(12か月)と、数字を組で覚えられます。マストの頂部からケーブルで吊った膜屋根です(令和4年・正しい肢)。
誤りの作り方:6つとも「すり替え」
- フィレンツェ大聖堂 ← ハギア・ソフィアの形
- ウェストミンスター宮殿 ← ヴェルサイユ宮殿の説明
- サン・ピエトロ大聖堂 ← 「ゴシック建築」
- ウィーン郵便貯金局 ← アーツ・アンド・クラフツ
- レッチワース ← ゲデスの保存的外科手術
- シュレーダー邸 ← ル・コルビュジエの五原則
まとめ
- ドームは直径で見分ける:パンテオン43.3m・フィレンツェ約44m・ハギア・ソフィア約31m
- サン・ピエトロ=ルネサンス/サン・カルロ=楕円ドーム
- ウェストミンスター=ゴシック・リヴァイヴァル。鏡の間はヴェルサイユ
- 背景:大英博物館=新古典主義、タッセル邸=アール・ヌーヴォー、郵便貯金局=ウィーン分離派、シュレーダー邸=デ・ステイル
- 五原則=ル・コルビュジエ/田園都市=ハワード
出典
- 一級建築士試験 過去の試験問題等(平成29年〜令和8年の学科Ⅰ・正答肢)|建築技術教育普及センター
- 建物の年代・特徴:Wikipedia(英語版、2026年10月5日参照)の各建物の記事
- 写真:Wikimedia Commons(各写真の下に作者とライセンスを表記)。図は筆者による略図
この記事は公表資料をもとにした個人の学習ノートです。問題文は要約しており、時代の区分と「どこが誤りか」は筆者の判断です。建物の年代などは原典で必ずご確認ください。


