【一級建築士 学科Ⅲ】防火・避難・内装制限の過去問53問|No.6〜9は10年とも同じ枠・現行条文と誤りの作り方
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一級建築士・学科Ⅲ(法規)の防火・避難・内装制限は、火事のときに人が逃げられて、火が広がらないようにするための決まりです。法規は30問で足切りは16点。この分野は毎年必ず4問出ています。過去10年の出方と、いまの条文の数字を図で整理します。
動画でも解説しています。
何を調べたか
- 問題:平成29年〜令和8年の学科Ⅲ(法規)300問
- 防火・避難・内装制限は 53問(17.7%)
- 数字・条文は e-Gov の現行条文(令和8年10月8日時点)で確認
- 問題の分類は筆者の判断
出る場所は決まっている

縦が問題番号の枠、横が年です。法規のNo.6〜9の4行に空白がありません。10年すべて、防火・避難・内装制限の問題でした。防火地域の問題も10年のうち9年で出ています。既存・仮設・用途変更は、令和4年以降だけの新しい型です。
53問を柱ごとに分けると、避難施設等が15問で最多、次いで耐火建築物等と防火地域が10問、内装制限が7問、防火区画が6問です。
① 避難施設等
言葉の整理
- 直通階段とは、途中で別の階段に乗り換えず、避難する階か地上まで続く階段のこと
- 歩行距離とは、部屋のいちばん奥から、その階段まで歩く距離のこと
- 無窓居室とは、窓がほとんどない部屋のこと(例:窓のないカラオケボックス)。煙がたまりやすいので決まりが厳しくなる
歩行距離のものさし

主要構造部が準耐火か不燃の場合の数字です(木造などでは短くなります)。
- 無窓居室・百貨店など:30m
- 病院・ホテル・共同住宅など、そのほかの居室:50m
- 居室と通路の内装を準不燃にすると 10m足せる
- 15階以上の階は10m短くなる(50m → 40mなど)
共同住宅の15階以上は60mにならない。15階以上は10mを足せないので、高層マンションの15階で内装を準不燃にして60mとする肢は、令和2年も平成29年も誤りでした。
店舗の階段幅は計算で解く
物販店舗で床面積の合計が1,500m²を超えるものが対象です。
- 階段幅:直上階以上の最大階の床面積100m²につき 60cm
- 避難階の出口幅:最大階の床面積100m²につき 60cm
- 例:各階600m²の3階建て → 3.6m(3.0mでよい、は誤り)
- 例:各階700m²の5階建ての出口 → 4.2m(4mとした肢は誤り)
避難階段は3種類

- 屋内の避難階段:階段を壁と防火の扉で囲む
- 屋外の避難階段:建物の外に付け、階段は耐火構造(準耐火構造とした肢は誤り)
- 特別避難階段:さらに付室をはさみ、扉が二重になる形
5階以上の売場に通じる階段は、1つ以上を特別避難階段にします。「避難階段としなければならない」とした肢は誤りです。
防火設備の時間と、学校等
- 避難階段の出入口の防火設備は 20分(10分とした肢は令和3年・令和6年とも誤り)
- 学校・体育館・ボーリング場・スポーツの練習場は、非常用の照明が不要
- 幼保連携型認定こども園は学校等に入らない。幼稚園から用途を変えると、原則として非常用の照明が必要
- 病院で 100m²ごとに区画した部分は、排煙設備が不要(3回とも正しい肢)
非常用の進入口

- 非常用の進入口:間隔 40m以下
- 代わりの窓:壁面の長さ 10m以内ごと
この2つを混ぜて「外壁面の長さ40m以内ごと」とした肢が、令和6年に誤りでした。
② 耐火建築物等と防火地域
言葉の整理
- 耐火建築物:火事になっても簡単には壊れず、燃え広がりにくい建物
- 準耐火建築物:その一段ゆるい建物
- 防火地域:建物が密集し火事が広がりやすい市街地で、特に厳しい地域。準防火地域はその外側で少しゆるい地域
- 延焼防止時間とは、周りの建物へ火が燃え移るのを止められる時間のこと
何で建てる?

- 防火地域:3階以上か延べ100m²超なら耐火建築物、それ以下なら準耐火建築物
- 準防火地域:4階以上か延べ1,500m²超なら耐火建築物
- 準防火地域:3階建てで1,500m²以下、2階建てで500m²超なら準耐火建築物
- いずれも、同等以上の延焼防止時間のものでもよい
準防火地域の3階建ては、延べ1,500m²以下なら準耐火建築物で足ります。令和元年の改正で変わった大きな点で、令和4年の180m²の3階建て住宅、令和8年の1,400m²の3階建て事務所は、どちらもこの区分で正しい肢でした。
防火地域のそのほかの規定
- 看板・広告塔:屋上に設けるなら高さにかかわらず不燃材料で造るか覆う(法64条)
- 外壁が耐火構造なら、隣地境界線に接して建てられる(法63条)
- 防火地域と準防火地域にまたがる建物は防火地域として扱う(法65条)。3階建てなら耐火建築物で、「準耐火も可」とした肢は誤り
- 仮設の事務所は法61条の対象外
③ 内装制限

内装制限とは、部屋の壁と天井の仕上げ材を燃えにくいものにして、火事のとき火が一気に広がらないようにする決まりのことです。仕上げ材には燃えにくさの3段階があります。
- 不燃材料:20分
- 準不燃材料:10分
- 難燃材料:5分
どこを何で仕上げるかは次のとおりです。
- 居室の壁と天井:難燃材料(3階以上に居室があると天井は準不燃)
- 廊下・階段などの通路:準不燃材料
- 自動車車庫・地階の居室・無窓居室:居室も通路も準不燃
- 非常用エレベーターの乗降ロビー:仕上げも下地も不燃材料
誤りの作り方は次のとおりです。
- 病院の通路を難燃にする → 誤り
- 乗降ロビーを準不燃にする → 誤り(令和元年・令和7年)
- 自動車車庫は規模を問わず準不燃 → 正しい(3回)
- 耐火建築物の病院等で100m²区画した居室は内装制限の対象外 → 正しい
④ 防火区画

防火区画とは、火と煙を区切る壁や床や扉のことで、区切る理由で5種類に分けられます。
- 面積区画:広い階を1,500m²ごとに区切る
- 高層区画:11階以上を100m²ごと(内装準不燃なら200m²、不燃なら500m²)
- 竪穴区画:階段や吹抜けを区切る。煙突のように煙が上の階へ一気に上る通り道だから
- 異種用途区画:用途がちがう部分を区切る(例:自動車車庫150m²以上)
- 界壁:となりの住戸との壁。準耐火構造にして小屋裏まで達する
誤りの作り方は次のとおりです。
- 高層区画で内装を難燃にして200m² → 準不燃が必要なので誤り
- 竪穴区画の例外は避難階とその直上階・直下階だけ。「2階から3階」の吹抜きを区画しない → 誤り
- 3階建てで200m²以内の住宅は吹抜きの区画が不要。区画が必要とした肢は誤り
- 異種用途区画は車庫150m²から。130m²を区画が必要とした肢は誤り
⑤ 仮設・既存・用途変更(令和4年以降)

仮設建築物(イベント会場の仮設店舗など)や一時的な用途変更では、内装制限は外れますが、避難・排煙の規定(法35条)は外れません。一時的な興行場に内装制限が適用されない、という肢は正しく、排煙設備や避難施設が適用されない、という肢は誤りでした。
工事を2つ以上に分けるときは、全体計画の認定を受ければ、最後の工事に着手するまで現行基準を適用しません。全体計画の認定とは、最後は今の基準に直す計画を役所が認めることです。着手後は適用されるので、「いずれの工事の完了後も改修不要」とした肢は誤りです。
⑥ 法改正

- 令和元年6月25日:防火地域の規定が法61条にまとまり、延焼防止時間の考え方が入った
- 令和6年4月1日:耐火建築物の定義に「特定主要構造部」が入った(骨組みのうち、火事のとき特に大切な部分)
- 令和7年11月1日:仕上げと下地を不燃にする規定に「それに準ずる措置」が加わった(令和8年の問題に反映)
- 令和8年11月1日:政令の改正で、面積区画や竪穴区画に「国土交通大臣が定めるものを除く」枠ができる。具体的な基準は今後の告示。基準日が1月1日なら令和9年の試験の範囲
過去問の答えが、今は変わる肢
平成28年の問題で「準防火地域の機械製作工場は、耐火建築物と準耐火建築物以外にできる」という肢は正しい肢でした。令和元年の改正でこの除外はなくなり、現行では準耐火建築物か同等のものが必要です。問題文に「同等以上の延焼防止時間」という言い方があれば、令和2年以降の版と見分けられます。
まとめ
- 歩行距離:30・50m。準不燃で10m足せるが、15階以上は足せない(共同住宅の15階以上は60mにならない)
- 準防火地域の3階建て:1,500m²以下は準耐火で足りる
- 内装:居室=難燃、通路=準不燃、車庫・地階・無窓=準不燃、乗降ロビー=不燃
- 防火区画は5種類。高層区画の緩和は準不燃200m²・不燃500m²
- 仮設・既存:内装は外れるが、避難・排煙は外れない
出典
- 一級建築士試験 過去の試験問題等(平成29年〜令和8年の学科Ⅲ・正答)|建築技術教育普及センター
- 建築基準法・建築基準法施行令|e-Gov法令検索(令和8年10月8日時点の条文)
- 令和4年改正 建築基準法について|国土交通省
- 「建築基準法施行令の一部を改正する政令」を閣議決定(令和8年9月11日)|国土交通省
この記事は公表資料をもとにした個人の学習ノートです。問題文は要約しており、問題の分類は筆者の判断です。条文・数値は令和8年10月8日時点のものです。試験は出題年の1月1日現在の法令で解くので、必ず原典と最新の受験要領をご確認ください。


